2024年10月27日に投開票が行われた衆議院総選挙において、「手取りを増やす」を公約として掲げて、公示前の議席数に対して4倍の28議席を獲得した国民民主党。
今年度の補正予算成立を目指す与党との間で、国民民主党はその主要な公約であった基礎控除等を178万円まで引き上げることを、3党の税制調査会長間で話し合いを続けてきました。
しかし、話し合いはなかなか進展せず、年内の補正予算の成立期限も迫ってきました。
ところが、2024年12月11日の自民、公明、国民民主の3党の幹事長会談で、年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」について、国民民主が主張する「178万円」を目指して来年から引き上げることなどを盛り込んだ合意書を交わすことになりました。
また、ガソリン税に上乗せされている暫定税率も、国民民主の主張を与党側が受け入れ、廃止すると明記しました。
この税調会長間の話し合いを飛び越えての頭ごなしの合意に対して、自民党の宮沢税調会長は「釈然としない」と反発の態度を見せました。
宮沢洋一 税調会長
「(これまでの)3党の税調会長の協議というものは、一歩一歩、前進をしてきたところで、こういう話が出てくることについて言えば、釈然としない感じは正直言ってございます」
そして、その2日後の12月13日の3党の税制協議において、自民・公明の両党は、所得税の控除額を現在の103万円から20万円引き上げて123万円に変更し、年末調整で対応する形で来年から実施すると提案をしてきました。
この案の引き上げの根拠は、1995年からの食料や光熱費など生活に欠かせない品目の物価上昇をもとに、控除額を20%引き上げると説明でした。。
当然ながら、この案に対し国民民主党は、先の3党の幹事長合意で控除額について「178万円を目指す」としていることを踏まえ、国民民主党の古川税調会長は「話にならない」と反発しました。
自民党税制調査会長の持つ権力
元財務官僚で、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、自身のYouTube「高橋洋一チャンネル」において、自民党税制調査会の持つ権力と、時の総理大臣も手を出せない聖域であること解説していました。
その中で、自民党税制調査会の中にはインナーと呼ばれる7人がおり、さらにコアインナーと呼ばれる会長を含む4〜5人でこの国の税に関しての全てを決定していると話しておりました。
そして、そこにはオブザーバーとして財務省と総務省の官僚が出席しており、彼らの意見がかなりの割合で反映、もっと言えば「言いなりになっている」と解説されておりました。
そして、自民党の税調会長の持つ権力は、幹事長よりも、時の総理大臣を凌ぐと話していました。
コアインナーが誰なのかは、宮沢会長とその隣に座っている後藤重之元経済再生相以外はよくわかっておりません。
自民・公明が出した123万円と言う数字
自民・公明・国民民主の3党幹事長で合意した、「178万円を目指す」と言う数字に対して、自民党税調が出した「123万円」と言う数字は、あまりにもかけ離れており、確かに3党幹事長合意を反故にするような国民民主党をバカにしたような数字に感じます。
自民党の提案では、基礎控除を48万円から58万円に、給与所得控除を55万円から65万円に引き上げるとしています。
この提案は、控除額全体を20%程度引き上げることで、物価上昇に対応できると言う言い分です。
しかし、ここでも高橋洋一氏は自身の「高橋洋一チャンネル」で下記のように説明しておりました。
控除項目ごとの数字を自民党は出してきたが、その数字の根拠は何もなく、
と話しておりました。
おそらくこれが真実なんでしょう。
「103万円の壁」は長年にわたり日本の労働市場で議論されてきた課題です。
この制度の見直しに向けて、与党と国民民主党がそれぞれ異なる控除額を提案し、税制改正をめぐる論争が活発化していますが、その数字と考え方はあまりにもかけ離れております。
現在の「103万円の壁」は、年収が103万円を超えると所得税や社会保険料が発生するため、多くのパートタイム労働者がこの範囲内に収入を抑えようとしていることは周知の事実です。
この壁が結果として働く意欲を削ぐ一因となり、日本経済にとって重要な労働力の供給が制限される問題がクローズアップされております。
そのような状況下で、この壁を見直すことで労働市場の活性化や生活水準の向上を図ることが、喫緊の課題となっているのに現状では議論の先行きが見通せない状況です。
今後の展望
現在、与党と国民民主党の間で協議が続けられていますが、両者の溝は依然として深いままです。
与党内でも「現実的な着地点を見つけるべき」との声があり、来年度以降の税制改正に向けた議論がさらに白熱することが予想されます。
また、国民民主党側が178万円への引き上げを主張する一方で、与党が提示する123万円案が妥協点となる可能性もあります。
次回以降の協議で、これらの数字の背景にある政策意図や財源確保の議論を注視していかなければなりません。
コメント